結び目
ほぼ自傷行為に等しいその行動は前を進んでいるつもりが後ろ向きに歩いていた。
完全に鬱に戻ってしまっている。
後悔と反省を繰り返し、泥濘んだ沼を歩く。
四方八方から伸びる影が24時間ずっとまとわりついてくる。
深夜4時、職場に一本の電話
腹痛で休みます。
電話を切り、一分前まで腹で渦巻いていたような気がした痛みを一時的に抑える。
結局これがボディーブローのようにじわじわきいてくるのは何度も経験しているのに。
休んだところで何も変わらない、止まらない取り立て、かつて幸せを結んだ人からの罵詈雑言、親からの「まっすぐ」な言葉
その全てに対応しきれなくなった。
無料マッチングアプリで知り合った女に泣きながら食料がないとすがりつき、買ってもらった食料を抱え帰宅。
誰も居ない3dk、一人では持て余すこの部屋を見渡し少し前のことを思い出す。
ビニール袋パンパンの食材を放置したまま、足元に散らかっていたネクタイをカーテンレールに固く結びつける。
死ねるはずもない、わかっていたが何か変わるのかと
ロープに見立てたその輪っかから首への圧力を感じてみた。
地面につま先はついている。
人生初の自殺未遂未遂はわずか10秒で終わった。
馬鹿らしく虚しくなったのだ。
地元の友達に連絡をとってみた
仲はいいが連絡をしてなかった随分と久しぶりの連絡だった。
子供が生まれて結婚するらしい。
心から友の幸せを祝福した。
こんな状態でも人の幸せだけは素直に喜べるのは長所なのだろうか
自分に対しては諦めがついている。
資格がないとまでいわれてしまったのだからそうだろう。
カーテンレールにぶら下がったままの「勇気」を眺めながら
頭の中で結び目をひとつほどいて眠りに就いた。